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朝起きるのがつらい人は漢方薬で治療できます

 起床困難、つまり朝起きるのがつらい、起きると吐き気がしたり、頭が「ぼーっ」としたり、めまいがしたりする人がいます。小学生・中学生の思春期前後のお子様にこれらの体調不良が継続し、病院で検査を受けても該当する異常を認めない場合、多くは「起立性調節障害」と診断されます。これらは低血圧の症状で、脳血流が低下して起きる現象です。
有病率は全人口の1%前後、若年者に絞れば7~16%に及ぶと考えられています。朝起きられないことへの周囲の不理解から「怠けている」「気合が足りないだけ」「夜にゲームばっかりして、早く寝ないからだ」などと思われ、退学や退職につながる、あるいは自殺に至るケースもあり社会的影響が大きい疾患です。
 心因的な要素も考えられていますが、休日、夏休みなどの長期休暇にも同様の症状が持続し、心因となる要素がなくても症状が改善しない場合は冷え症が考えられます。
 深部体温が低下すると、内臓が冷えます。冷えた内臓は本来の力を発揮できないので、機能不全になります。心臓が機能不全になれば、心不全と呼ばれます。心臓の機能とは血液を全身に送ることですが、力の弱い心臓から出る血液は脳に届かないので、ぼーっとしてなかなか起きられないのです。しかし、身体が冷えている間だけの機能不全ですので、太陽が昇り地表が温まる10:00~11:00頃には、身体も温まってきて機能不全も回復します。病院で診察を受けても、その時間には既に心不全も改善しているので、検査では異常は出ません。
西洋医学的には、血圧の低下がみられる場合では昇圧剤にて治療を行うことが一般的です。ただし昇圧剤を服用しても頭痛や動悸などが充分に改善できない例が散見され、さらに血圧の低下がないタイプのものや、逆に一過性の血圧上昇を示すタイプもあり、定まった治療方法がなく、未だ模索されている段階です。
冬の朝は特に苦手で、何度起こされても起きることができずに、結局昼近くまでベッドで過ごし、学校に行けなくて困っている人たちがいます。起立性調節障害に対してよく使用される漢方薬に苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)があります。この漢方薬は胃腸の虚弱がベースにあり、冷えと水の巡りの異常が関与する諸症状に対して効果がある漢方薬です。
それ以外にも茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)、五苓散(ごれいさん)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などが使われています。根本に冷え症があると考えると私の一押しは当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)です。冷えて、深部体温が維持できない状態で、特に脳内の温度が低下し、それ以外から血流の補充が一時的にできなくなっているのではないかと考えられます。