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認知症に効く漢方薬はありますか?
上記のような電話でのお尋ねがありました。
認知症の主症状は、物忘れですが、認知症は進行性の病気なので、西洋医学では認知症を治すのではなく、進行を遅らせる薬が一般に使われています。物忘れそのものを治す漢方薬はありません。しかし本人や家族が困っていることに焦点を当て、それを改善する漢方薬はあります。幻覚、妄想、暴言、暴力、介護抵抗、無気力などの精神症状は認知症の介護を難しいものに変えてしまいます。近年これらのBPSD(周辺症状)に対して漢方薬の抑肝散(よくかんさん)がある程度の効果があることがわかり、盛んに使われるようになったのですが、抑肝散は認知症そのものには無効です。
認知症の対応で重要なことは薬物療法ではありません。むしろその人を受け入れ、安心させ、安全で、健康な日常が過ごせるようにする環境が何にもまして重要です。何かにこだわる性格や不安感や抑うつ感などの性格の偏りがひどくなる場合があり、抑肝散だけではなく、それよりもっと有効な、それらひとつひとつの症状を和らげる漢方薬が使われます。